- Report
「アート思考」と「アーティストの思考」
2020/07/10アートは「問い」?
“Design is a solution to a problem.”
→デザインは、問題に対する解決策であり、
“Art is a question to a problem.”
→アートは問題に対する問いである。
これは、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインの学長やMITメディアラボの副所長を務めたJohn Maedaの言葉です。
さらに近年は、RCAのアンソニー・ダン教授らによる「Speculative Design」という言葉も頻繁に用いられるようになりました。
「Speculative=思索的な、推論的な」という言葉にあるように、「課題解決型」のデザイン思考ではなく、現代の人類が直面する解決困難な課題の多くと向き合うために、思索するきっかけを与える「問い」を生み出すことの重要性が説かれています。
「問い」を立てる力の重要性
すでにある課題の解決策を考える力の重要性は、これからももちろん必要です。その一方で、次々と課題が複雑化していく社会においては、「私たちはどう生きることが幸せなのか?」「私たちの企業はどうありたいのか?」「私たちが住む地域や国はどうありたいのか?」など、理想とする未来に向けて「問い」を投げることが、これからますます重要になっていきます。
では、その「問い」を立てる力(言い換えるならば「アート思考」や「スペキュラティブ・デザイン思考」)はトレーニングによって身につくのでしょうか?
「アート」や「アーティスト」への先入観や誤解
この際、「アート」や「アーティスト」に対して、限定的な「美術教育」がもたらした先入観や誤解が根深く残っています。
それは、「絵や作品を作ること」「そのスキルを持った表現者」のようなイメージで多くの人がいることです。同時に、そのイメージには、「感覚的」「技術的」な印象が強く結びついています。
もちろん、そうした側面が強く出ている作家や美大生が数多くいることも否定はできません。
しかし、このProvotypesで紹介している「RoundUp」や「Recommended」を見ていただくと、「アーティストの思考」という点では、イメージしているものとかなり違うのが、お分かりいただけるのではないかと思います。
アーティストのように考えてみる。
実際に、私たちが一緒に仕事をするアーティストの多くは、表現者としての「技術」があるのはもちろんですが、それ以上に、その「思考」の組み立てに表現の源泉が見てとれます。
その姿勢は、常に私たちの価値観、信念、考え方について深い思索に満ちています。彼らの多くは、非常に多読家です。哲学、宗教、歴史、地質学、科学、文学など幅広い教養をもとに、自身の作品の背景にある「問い」を非常に静かに語っています(「芸術は爆発だ!」というメディアがイメージを作った岡本太郎氏もその著書を読むと、非常に深い教養のもとに静かな言葉で紡がれています)
そう考えると、アート思考というのは、1日2日の「アート思考研修」のようなもので身につくものではないことがわかります(世の中「○時間(○日)で身につく」が大好物ですが……)
アーティストのように生き、アーティストのように考えてみることで、時間を重ねる中で、身についていくものです。
そうしたことを、日々「考えるきっかけ」をということで、このProvotypesは作られています。
そうした社会を考えるヒントになる「Roundup」。
アーティストやクリエイターの本棚から彼らが読んでいる書籍を紹介する「Recommended」。
インターネットの記事で、日々考えるきっかけを手にし(しかし、それは、情報の「点」に過ぎないため)、本を読むことで、思考を体系化させていく。アーティストは日々、そのような毎日を送っています。
追伸
そんな彼らの暮らしは、非常に「丁寧」です。「丁寧に暮らす」という視点も大切ですね。
そう考えると、アート思考というのは、1日2日の「アート思考研修」のようなもので身につくものではないことがわかります(世の中「○時間(○日)で身につく」が大好物ですが......)アーティストのように生き、アーティストのように考えてみることで、時間を重ねる中で、身についていくものです。そうしたことを、日々「考えるきっかけ」をということで、このProvotypesは作られています。そうした社会を考えるヒントになる「Roundup」。アーティストやクリエイターの本棚から彼らが読んでいる書籍を紹介する「Recommended」